この「旧多芸小学校を偲ぶ」の稿は、平成10年に発行された、直江の郷土史家「早崎誠」氏がまとめられた「多芸小学校を偲ぶ」より引用させていただいているが、新旧2つの校歌の再生には、かなりの時間と労力を費やされたのではないだろうか。
以下は、早崎氏の研究冊子に述べられている一節である。
終戦前の小学校卒業時には、卒業写真一枚を記念品として贈られた程度で、卒業アルバムもなく、卒業式でも校歌を歌った記憶はなく、校歌の楽譜を持っている卒業生も皆無に近い。
しかし、幸いにも直江の日野蓮光寺住職(先代))が記憶と記録をたよりに歌詞を復元して下さり、また祖父江の佐竹吉子さんがメロディーを記憶されていたので、早速歌っていただき録音して、水野龍道先生の力添えを得て、採譜と編曲をお願いし、下のように、歌詞と楽譜を再生することができた。
それ以後、校歌というものらしきものは、多芸小学校には存在せず
私(大橋)は、昭和31年度の卒業であるが、校歌らしきものを歌った記憶はない。
昭和37年4月に、多芸小学校最後となる渡辺一矢校長が赴任された。音楽に造詣が深かった渡辺校長は、多芸小学校に校歌がないのを寂しく思われ、自ら作詞を手掛けられ、大垣市在住の田中一昭先生に作詞を依頼され生まれたのが、下記の新多芸小学校校歌である。
(歌詞を掲載する)
1. 朝日をあびて 養老の
山のみどりが 色映える
平和な姿 仰ぎつつ
みんなで手をとり 学ぼうよ
仲よく 楽しい 多芸学校
2.夕日にかがやく 牧田川
水面をわたる 風さやか
敬と愛とを 鑑とし
明るい心で はげもうよ
ひかりゆかしい 多芸学校
3.高速道の 末はるか
思いはかける 空の下
しっかと足を 地につけて
元気の勇んで 進もうよ
希望溢れる 多芸学校
作詞者の渡辺校長は、すでに平成4年に故人になられており、「校歌に 込められた先生の願い」をお伺いできないのは、残念であるが、当時は「名神高速道路」の建設が進められており、地域の豊かな自然に親しみながら、子供たちの心がけを諭されたのであろう。
早崎氏は、このように述べられ、廃校まで、わずかな日時しかなかったため、児童や地域の親しまれることなく、埋没してしてしまった「新校歌」を惜しんでおられる。
平成10年度の多芸東部ふるさと祭り(公民館まつり)で、早崎氏等の尽力により、多芸小学校最後の卒業生有志によっとて、この校歌は廃校後、初めて地域に披露された。
この流れを受け、私(大橋)も公民館長時代、地域の子ども会や老人会の方々にお願いして、この「多芸小学校校歌」をふるさと祭りで歌ってもらい、地域みんなで「多芸小学校を偲ぶ」営みを復活、継続してきた。
この2つの校歌(楽譜つき)は、今日もなお、「多芸国民学校」の校旗とともに、「多芸公民館」大会議室に掲示され、大切に保管されている。